自民党総裁選で岸田文雄前政調会長が新総裁に選ばれた。
10月4日召集の臨時国会で首相指名選挙が行われ、宮中での認証式などを経て岸田内閣が発足する。その後には政権選択選挙の衆院選が控えている。
総裁選の初回投票では、国会議員票、党員・党友による地方票ともに過半数を得た候補はいなかった。1位の岸田氏と2位の河野太郎ワクチン担当相の決選投票で、岸田氏が大差で勝利した。
岸田氏は当選後、「生まれ変わった自民党をしっかりと国民に示し、支持を訴えないといけない。総裁選は終わった。ノーサイドだ」と語った。
コロナで実績を挙げよ終盤まで混戦となった総裁選は注目を集めた。世論調査で自民の支持率は上昇傾向にあるが、同党や岸田氏が忘れてはならないことがある。菅義偉政権が、新型コロナウイルス対策の不手際から国民の信頼を失ったという点だ。
岸田氏は「(総裁選の)政策論争を通じて国民の信頼を回復する」と述べていた。これからは政策遂行で信頼を集めてほしい。そこで最も重要となるのは、危機の時代にあって、国民を守り抜く政治を行うことだ。
喫緊の課題は新型コロナ対応である。緊急事態宣言や蔓延(まんえん)防止等重点措置は解除が決まった。感染減少の局面にある今だからこそ、矢継ぎ早に対策を打っていかなければならない。
ワクチン接種の促進、3回目接種の準備、治療薬を行き渡らせることも急がれる。岸田氏は「医療難民ゼロ」を目指すと約束した。入院先が見つからず、自宅で亡くなる悲劇を繰り返してはならない。感染の第6波や未知の変異株登場に備え、医療提供体制の拡充を必ず実現してもらいたい。
長期にわたる自粛の影響で経営難に陥った事業者や、収入が減ったり、なくなったりした国民は多い。岸田氏はコロナ対応の数十兆円規模の経済対策を表明した。困っている人々に届く、きめ細かな施策を求めたい。
新型コロナと並んで取り組むべきは安全保障を確かなものにする努力だ。国民の生命を守り抜き、繁栄の基盤を確かなものにしなければならない。
世界は今、東西冷戦終結以来30年ぶりの大変動期にある。覇権主義的な中国、核・ミサイル戦力の強化を進める北朝鮮の脅威に日本は直面している。
嵐が吹き荒れる国際社会で「日本丸」の舵(かじ)取り役を務めるという自覚が求められる。温厚な人柄で知られる岸田氏だが、外交安全保障は笑顔で握手するだけでは済まないことは分かっているはずだ。国家国民を守るため、時には厳しい言葉や力強い態度で臨むことも必要である。
中国が50年ぶり論点に今回の総裁選は、日中国交正常化がテーマとなった昭和47年の総裁選以来およそ半世紀ぶりに中国、台湾問題が論じられた。日本をとりまく安全保障環境がそれだけ厳しいということだ。
岸田氏は、台湾海峡の平和などへ「米欧豪印などとともに毅然(きぜん)と対応」すると公約し、敵基地攻撃能力の導入を「有力な選択肢」とした。経済安全保障の担当閣僚や中国などの人権侵害に対応する首相補佐官新設も打ち出した。議員票で2位となった高市早苗前総務相は、防衛費増額やサイバー防衛など抑止力強化の具体策を提案した。これらも含めぜひ実現してもらいたい。
岸田派(宏池会)は党内でハト派と目されるが、宏池会出身の宮沢喜一元首相は、初の国連平和維持活動(PKO)としてカンボジアへ自衛隊を派遣した。集団的自衛権の行使容認にも前向きだった。岸田氏も、日米同盟と抑止力を強める現実的な安全保障政策を進めるべきだ。これは外交力向上にも欠かせない。
安定的な皇位継承策は国の基本に関わる。岸田氏は、一度の例もない「女系天皇」に反対を表明した。男系(父系)継承を貫いてきた日本の皇統を守る手立てを確実に講じてもらいたい。
憲法改正を前へ進めることも自民党総裁としての重要な役割といえる。
菅首相は国民への説明不足で支持の低下を招いた。臨時国会では所信表明演説や代表質問がある。岸田氏は国民を前に、明快な言葉で目指す政治を語るべきだ。
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