27日に投開票された兵庫県西宮市長選で、大阪以外で初の公認首長を目指した日本維新の会は、再選した現職に4万票近い差をつけられ完敗した。昨年の衆院選で比例復活を含め、県内で擁立した9人全員が当選した勢いに水を差された格好だ。「看板」だけでは勝てない現実に直面し、戦略の練り直しは避けられそうにない。
「現職に大きな失点がなく安定した戦いをされた。完敗だ」。維新の松井一郎代表(大阪市長)は28日、記者団にこう述べた。
西宮市長選は無所属の現職、石井登志郎氏(50)と維新の元県議ら3人が争った。石井氏は、維新の躍進を警戒する自民党の支持に加え、立憲民主党の地元組織の支援も得て「維新対抗網」を形成し、8万8572票を獲得。対する維新陣営は4万9158票で、ある党幹部は「もう少し詰めるかと思ったが、大差がついた」と嘆いた。
敗因について、複数の維新幹部が活動量不足を指摘する。陣営の選対責任者を務めた三木圭恵(けえ)衆院議員=比例近畿=は「現職のハードルは高かった。地元に根付いた組織づくりができていない」と語った。
〝失点〟がない現職を相手に明確な争点をつくり出せなかった面も。吉村洋文副代表(大阪府知事)は「18歳までの医療費無償化などが(現職陣営の主張と)かぶり、独自色を出せなかった」と振り返る。
平成30年の前回市長選から微増したとはいえ、41・28%の低投票率も影響した。特定の支持組織を持たない維新候補の当落は、無党派層の投票行動に左右されるためだ。松井氏は「昨年の衆院選で、ある程度期待値が高かった。伸びしろがなかった」と分析。吉村氏も「高い投票率にならなかったのも、われわれの責任。維新への期待が薄かった」とした。
夏の参院選を見据え、全国政党化を図る維新にとって、大阪以外での公認首長は悲願だった。27日の党大会で採択した活動方針にも「近畿圏で公認首長の誕生へつなげることこそが維新の改革を国民に示す最短距離」と記した。
こうした考え方が今回、「党勢拡大に市長選を使うべきではない」との批判を招いたことも事実。石井氏を支持した自民系市議は「自民に対する野合批判もあるだろうが、維新人気を背景にした党勢拡大に嫌悪感を抱く人も同じくらい多いはず」と苦言を呈した。
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