【ロンドン=中島裕介】英国のトラス首相は20日、「保守党から選出された任務を果たすことができない」と辞任を表明した。9月下旬に打ち出した大規模減税策が金融市場を混乱させ、経済対策の大半は撤回に追い込まれた。辞任はその引責とみられる。9月6日の政権発足から44日という異例の短命政権となった。
首相官邸で与党・保守党で党首選出手続きを担う「1922年委員会」のブレイディ委員長と会談後に表明した。チャールズ国王に党首辞任を伝達したとも述べた。ブレイディ氏は新首相となる党首を28日までに選出すると語った。
トラス氏は新党首選出までは首相の職にとどまる。後任にはジョンソン前首相やスナク元財務相の名前が挙がるものの、衆目の一致した候補はおらず、政治の混乱が続く可能性がある。
トラス政権の経済対策をめぐっては、財政悪化の懸念から通貨ポンドと英国債価格が急落するなど市場の混乱を招いた。10月中旬以降、財務相を更迭し大半の減税策を撤回するなど「Uターン」を余儀なくされ、支持率は1桁に落ち込んだ。19日には内相も辞任し、与党内からも退陣を求める声が強まっていた。
20日のロンドン市場では、英国債とポンドが買い戻された。30年物国債の利回りは一時、前日比約0・2%下落(価格は上昇)の約3・8%と、約2週間ぶりの低水準となった。外国為替市場では一時1ポンド=約1・13ドルと、前日末の1ポンド=1・12ドル付近から上昇して推移している。
ただ株式市場では政治的な不安への懸念から、代表的な株価指数の英FTSE100は上昇から下落に転じた。
「英国はリーダー不在となったが、市場は安堵しているようにみえる。もっとも、新首相は金融市場の信頼を完全に取り戻すためにさらなる施策が必要だ。31日に発表される中期財政計画で、財政の穴がどのように埋められるかが明らかになるかが焦点となる」と英キャピタル・エコノミクスのポール・デールズ・チーフ英国エコノミストは指摘する。
トラス氏は相次ぐ不祥事で辞任したジョンソン氏の後を継いだ。故サッチャー氏、メイ氏に続く英史上3人目の女性首相だった。7~9月に行われた首相を選ぶ与党・保守党の党首選では、減税を軸とする成長戦略を前面に掲げ、ジョンソン派の議員や党員の支持を集めて勝利した。
トラス氏は石油メジャー勤務などを経て2010年に下院議員初当選、14年には環境相に抜てきされ、国際貿易相や外相などを歴任した。
英国はジョンソン前首相が辞任を表明した7月以降、外交面で国際的な影響力も薄れている。ウクライナ危機が続くなかで反ロシアの先頭に立つはずの英国政治の混乱は、西側諸国の結束にも悪影響を与えかねない。
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