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Saturday, October 8, 2022

平和賞受賞「国際的な連帯示せた」 ロシアの人権団体「メモリアル」 - 毎日新聞 - 毎日新聞

ロシアの人権団体「メモリアル」幹部のスベトラーナ・ガーヌシキナ氏=モスクワで2019年12月18日、大前仁撮影 拡大
ロシアの人権団体「メモリアル」幹部のスベトラーナ・ガーヌシキナ氏=モスクワで2019年12月18日、大前仁撮影

 ロシアが隣国ウクライナへの侵攻を続ける中、ノーベル平和賞の授賞発表は暗闇に光をともしたのか――。長年にわたり政府の強権に立ち向かってきたロシアの人権団体「メモリアル」は7日、同賞の受賞が決まった。幹部のスベトラーナ・ガーヌシキナ氏(80)は「国際的な連帯を示せた」と意義を語った。

 今年のノーベル平和賞受賞が決まったのは、メモリアル▽ベラルーシの人権活動家アレシ・ビャリャツキ氏(60)▽ウクライナの人権団体「市民自由センター」。プーチン露政権は2月以降、ウクライナへの侵攻を続け、ベラルーシにも軍事侵攻に加わるように圧力をかけ続けている。こうした厳しい状況の中でも、3カ国の人権活動家や人権団体は活動を続けてきた。

ノーベル平和賞に選ばれたロシアの人権団体「メモリアル」のロゴは過去の受賞者の写真と共に掲げられた=ノルウェー・ノーベル賞委員会で、NTB・ロイター 拡大
ノーベル平和賞に選ばれたロシアの人権団体「メモリアル」のロゴは過去の受賞者の写真と共に掲げられた=ノルウェー・ノーベル賞委員会で、NTB・ロイター

 ガーヌシキナ氏は7日、毎日新聞モスクワ支局助手の電話取材に「全てのロシア人が悪いとみなされているときに、我々がウクライナやベラルーシの同僚と切り離されたわけではないと認められた」と述べた。そのうえで「(人権のような)明確な価値観は国境よりも重要だ」と言明。互いの国民が協調できる余地があるとの考えをにじませた。

 メモリアルは、スターリン時代に起きた粛清の犠牲者の名誉回復や避難民支援などに取り組んできた。ガーヌシキナ氏は強権政治がまかり通ったソ連時代から人権問題に取り組んできた「歴戦の闘士」と言える。

 もともとは大学の数学教師だったが、1988年に当時はソ連を構成していたアゼルバイジャンとアルメニアの両共和国が衝突し多くの避難民が生まれると、支援活動に関わるようになった。

 90年には非政府組織「公民としての支援」を発足させ、代表に就任。翌91年にメモリアルの関連組織の発足に関わり、2度にわたる「チェチェン紛争」(94~96年、99~2009年)では多くの避難民支援に当たった。その後もロシアから強制帰国させられる恐れがある滞在者への支援や、シリアやアフガニスタンなどからの難民の認定にも取り組んできた。16年の下院選では改革派政党「ヤブロコ」から出馬したが、当選はかなわなかった。

 00年に発足したプーチン政権は年々、強権の度合いを増し、人権尊重を訴えてきたメモリアルを敵視するようになった。16年には「外国の代理人」に指定し、その活動に制限を加えた。「外国の代理人」はプーチン政権によるスパイのレッテル貼りとも言える。政権の意をくんだとみられるロシア最高裁は21年12月、法律違反を理由にメモリアルに解散命令を出し、今年に入って解散に追い込んだ。メモリアルは、ロシア国内法に基づけば存在しない状態でノーベル平和賞を受賞することになる。

 受賞が決まった7日、メモリアルはモスクワの裁判所で、これまで事務所として使ってきた建物の使用継続を求める裁判に臨んだが、却下された。ガーヌシキナ氏は「こんにちの(ロシアの)法廷はすでに壊れた機構だ」と嘆く。それでも「地球に住む我々全員には共通するものがあり、それが結束を生んでいる」と語り、人権や自由といった価値観の重要性が今回の受賞発表で世界に発信されることの意義をかみしめていた。【大前仁】

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