元日に最大震度7の地震に襲われた石川県・能登半島。先端部の珠洲(すず)市狼煙(のろし)町地区には激しい揺れに続いて津波も到達したが、地区内に犠牲者は出なかった。訓練通りに避難し、安否確認には住民の情報をまとめた「避難者確認名簿」を活用。日頃の備えが小さな「漁村」の住民たちを守った。
「破壊力違った」
狼煙町地区の糸矢敏夫区長(68)によると、同地区には約50世帯100人が暮らす。糸矢さんは1日夕、集会所の狼煙生活改善センターにいた。大きな揺れで外に飛び出し、自宅まで戻る途中、さらに激しい揺れが襲った。直後に大津波警報が発令され、他の住民らに避難を呼びかけながら、家族や帰省中の孫らを連れて高台まで避難した。
激しい揺れから約5分後、沿岸へ押し寄せる波が高台から見えた。昭和39年の新潟地震や58年の日本海中部地震でも津波を経験していたが、「波頭が立った波が押し寄せてきた。今までとは破壊力が違った」。周辺沿岸部では小舟が打ち上げられるなどしたが、津波を想定した訓練を毎年続ける住民らは訓練通りに高台へたどり着き、津波による人的被害はなかった。
きっかけは5年前の訓練
津波が引いた後、住民や帰省中の親族、観光客ら計約130人は地区内の道の駅の駐車場に集まった。安否確認に役立ったのが、5年前の防災訓練をきっかけに作成した住民の氏名や住所、連絡先などをまとめた「避難者確認名簿」。避難時に誰に手助けが必要かといった細かい情報まで記していた。
名簿をもとに安否確認を進めると、足の不自由な80代の女性がいないことが判明。名簿の連絡先に電話すると、女性は倒壊した自宅内から動けずにいた。4、5人の住民らが女性宅に向かい、無事に助け出すことができたという。
地元の将来に危機感
ただ、地区は道路状況が悪く、孤立状態に。住民や観光客らは車内や旅館、生活改善センターで過ごした。3日、孤立無援のまま糸矢さんらは軽トラックで観光客らを先導し、珠洲市役所へ向かった。ひびが入り、電線の垂れ下がった道を進み、普段なら20分程度で到着するのに1時間半もかかった。
観光客らを見送った糸矢さんらは、生活改善センターに戻って避難生活を続ける。高齢者らは2次避難先に移るなどし、センターにいる住民は約20人にまで減った。その中で心に募るのは、将来の狼煙町への不安だ。
地震で沿岸が隆起し、漁港は船の係留ができなくなった。漁業など地元産業の先行きは厳しい。もともと高齢化や人口減少が進んでおり、糸矢さんは「(今回の地震で)狼煙町が消滅してしまうのでは」と危機感を語った。(前原彩希)
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