政府による自治体への指示権を拡充する地方自治法改正案の審議が、衆院で大詰めを迎えている。
災害や感染症の蔓延(まんえん)など国民の安全に重大な影響を及ぼす事態であれば、災害対策基本法や感染症法などの個別法に規定がなくても必要な対応を指示できるという特例を規定した。指示に対し自治体には履行義務が生じる。
南海トラフ巨大地震や首都直下地震などの大災害は、いつ起きるか分からない。日本有事に直結する台湾有事を含め、政府が適切に指導力を発揮できる体制を急ぎ整える必要がある。地方自治法改正案を今国会で確実に成立させねばならない。
今回の改正は、新型コロナウイルス禍で政府の対応が後手に回り、感染を拡大させたことへの反省を踏まえたものだ。
クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」での集団感染では、都道府県境を越えた患者の受け入れ先を巡り、調整が難航した。このような広域対応が必要な事態は、当時の感染症法などで想定されていなかった。
政府と東京都は、感染拡大期における休業要請の範囲を巡り意見が対立した。当時は緊急事態宣言発令前に指示権を発動できず、具体的な内容が決まるまでに時間がかかった。
国会審議で立憲民主党は「国が正しいとの前提で指示に従うことを義務付けることで、かえって住民の生命や安全を損なう」と反発したが、これはおかしい。
被害が全国に及んだ場合はもちろんのこと、局所的であっても甚大な被害であれば、政府が前面に立つべきは当然である。想定外の事態でも、指示権を行使できるようにしておかなければ、守れる命も守れまい。
立民内にある「地方分権に逆行する」との批判も的外れだ。指示権発動は非常時の話である。事前に自治体から意見を聞いたり、資料の提出を求めたりする規定もある。
全国知事会は政府と自治体との事前協議を行う運用を求めているが、政府は発動要件を厳格にしすぎて、機動性を損なわないようにしてもらいたい。
指示権を発動した際に、対策が有効に機能するようにしておくことも重要だ。そのためには平時から政府と自治体との間で意思疎通をしっかりとっておくことが不可欠である。
からの記事と詳細 ( <主張>自治体への指示権 「想定外」への備え必要だ 社説 - 産経ニュース )
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