13日までに220人の死亡が確認された能登半島地震で、石川県は亡くなった人の氏名を公表していない。県の公表基準は家族等の同意が必要としており、「現時点では同意確認をするマンパワーが限られる」(馳浩知事)のが理由だ。ただ、被災地との通信もままならない中で、知人の生存に気をもむ人も多くいる。
昨年5月に県が定めた「災害時における安否不明者等の氏名等公表基準」では、連絡の取れない安否不明者については家族の同意なく原則公表としている。捜索や救助活動の助けになる場合があるためだ。
一方、死者は「家族等の同意」が主な条件だ。馳知事は13日の記者会見で「その人の生きていた証し、なぜ人生の最期を迎えなければならなかったか。このことは公益性があると個人的な考えとしてはあるが、望まない遺族もいるなら配慮が必要だ」と説明した。
同意の確認は実質的には地元自治体が担うが、現時点では被害の把握や被災者への対応などで手いっぱい。輪島市の担当者は「マンパワーが限られる中、今後誰がやるのか、できるのか不安はある」と話す。
被災者の氏名公表を巡っては、2021年の静岡県熱海市の土石流災害が転機となった。県や市が安否不明者を公表して情報提供を呼びかけ、捜索対象の絞り込みにつながった。これを受けて内閣府は同年9月、安否不明者は救助活動が重要な局面では都道府県による公表を基本とする指針をまとめた。だが、死者には触れず、都道府県側に判断を委ねている。
21年の内閣府の資料によると、死者の氏名などの公表については27都道府県が方針を定めるが、うち23は遺族の同意を条件にしており、多くが個人情報や遺族感情を理由に挙げている。神奈川県は安否不明者、死者いずれも原則公表するとしている。
個人情報保護委員会の初代委員長も務めた一橋大の堀部政男名誉教授(情報法)は「知り合いが被災地にいる人にとって、亡くなった人を知りたいと思うのは当然。遺族の心情もあるかもしれないが被災していれば亡くなったことを伝えるのも難しく、速やかに公表する公益性はあると思う」と話す。
(井上靖史、田嶋豊、福本英司)
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