能登半島地震の発生から4月1日で3カ月が経過した。この間、被災地に心を寄せていた人がいる。金沢市生まれで人気アイドルグループ、SixTONESのメンバー、森本慎太郎。イットでは、森本さんと被災地を巡り、今、被災地が抱える課題を取材した。2回目の今回は、七尾市にある和倉温泉の現状、そして伝統産業、輪島塗の工房を取材した。
名湯・和倉温泉は今
この記事の画像(39枚)1200年の歴史を持つ和倉温泉。北陸随一の『海の温泉』として加賀前田家の歴代藩主にも愛用された。
しかし…
和倉温泉観光協会 平野正樹さん:
ここは、全部、本当はフラットな地形なんですけど…
SixTONES 森本慎太郎さん:
すごい、でこぼこになっちゃって…本来であれば観光客がいっぱいいて。
最大震度6強を観測した七尾市。4月1日、ようやく断水は解消されたが、実際に使えるようになるまでは時間がまだかかる見込みだ。
無事だった「和倉温泉の命」
森本慎太郎さん:
岩山って言うんですかね、ちょっと湯気が…
平野正樹さん:
ここが「涌浦乃湯壺」といって、源泉が出ている場所です。
森本慎太郎さん:
あ、においがする!
平野正樹さん:
だれか温泉玉子作っていますね。
森本慎太郎さん:
これは、触って良いやつですか?
平野正樹さん:
ちょと熱いですよ?90度近くあるんで。
森本さん:
今、指先だけしか触っていないですけど、やっぱ、温泉の力ってすごいですね。ほっとするというか。
平野さん:
和倉温泉の命というか、この源泉が無事だったというのは、町民にとっても、観光業にとっても本当にすくいでした。
総湯:
お待たせしましたあぁ!
和倉温泉の総湯は3月26日から営業を再開した。
お客さん:
待ち遠しかった。ここが一番いいですよ。
しかし、22ある旅館すべてで営業再開のめどはたっていない。その理由というのが…
森本さん:
うわぁ。ここは、地震当日、お客さんは…?
ゆけむりの宿 美湾荘 多田直未社長:
いらっしゃいましたね。
森本さん:
壁がもう、見てください、コンクリートむき出しで、全部ひびはいっちゃったり。ちょっと、想像していた以上ですね…。まじか…。
森本さん、想像していたよりも厳しい状況に言葉を失った。
森本さん:
中がこんなになっているとは、思わなかったので…。ちょっと衝撃です。
多田社長:
皆さんあまりわからないかもしれないんですけど、和倉温泉のおっきな建物の旅館さんは、無事だったところは一軒もなくて、みんな、本当に大変な状態なんです。
町を守る護岸は地震で大きく崩れていた。
多田社長:
護岸が全部、海の中に倒れてしまっていまして、庭が少し持っていかれるような感じで、この松の木なんか見るともう斜めに…
森本さん:
本当だ、斜めになっていますね。
多田社長:
夢に出てくる。海に建物ごと全部流されてしまうような夢も何回も見た。これから工事で新しい護岸整備が早急に求められますね。
護岸の管理も場所によって国や県、市などバラバラ。復旧工事の見通しすら立っていない。
多田社長:
能登島から和倉温泉見た時に、急がしい日だとみんな灯りがついていて、ハワイみたいな、すごいキラキラして、すごいきれいだって言いますね。
森本さん:
僕たちができることって何かありますか?
多田社長:
気にかけてくださっているというのがうれしいです。ニュースを見て心配に思ってくれたり、忘れないでくれると、ありがたいなと思いますね。
「自分は恵まれている…」我慢する被災地の人々
街を歩いていると…集まっている人を見つけた。
森本さん:
今、ロケをしていまして、お話伺いたいんですが、良いですか?
森本さん:
みなさんは、地元がここですか?
集まっていたみなさん:
この辺です。大丈夫大丈夫って、人には言うけれど、実際、大丈夫じゃない。でも自分よりしんどい思いをしている人がいることがわかるから、奥能登の人とか。それを見ていると「大丈夫」って言っておかないと行けないような…。自分は恵まれている方だから我慢しないとダメやなって思ってしまう。
集まっていたみなさん:
被災者になってみて、こんなものが必要なんだとか、こういうことが大変なんだとか、体感しないとわからないから。全国、地震もたくさん起きているから、みなさんひとつひとつ、明日はもしかしたら、自分が被災者になるかもしれないと思って、備えていく事って本当に大切だなって思います。
森本さん:
みなさん思うことがたくさんあって、でも言えないし、伝える場所がないし。抱えているものはそれぞれあるんだという事がお話を聞いてすごく感じました。
集まっていたみなさん:
みんな森本慎太郎さんの「推し」です。招集がかかりまして、「悔いのないようにみんな集合だ」と(笑)
森本さん:
僕、力になれているってことですか?
森本さん:
あー、ファンクラブ会員カードでじゃないですか!見えづらいですけど、SixTONESって書いてあるんです。
森本さん:
僕みたいな県外の人間が、被災地に土足で踏み入れていいのかなと、すごく思っていたんです。行って大丈夫なのかなって言う心配はありました。
輪島が好きだから”輪島で復興を”
次に訪れたのは輪島塗の工房。
輪島キリモト7代目 桐本泰一さん:
自宅も全壊してしまってますし、本町通り商店街と言う所の建物も全焼してしまっているので、住むところがなくて、工房の商品を片付けて、ここで避難生活をしております。
日本三大漆器の一つで、国の重要無形文化財に指定されている輪島塗。丈夫さと美しさにこだわった職人の技術が詰まっている。
江戸時代から「木と漆」にかかわってきた桐本家の7代目が桐本泰一さん。多くの職人を抱えながら、「輪島塗」を次世代に残そうと国の内外に発信続けてきました。あのルイ・ヴィトンからも受注を受けたこともある。
桐本さん(当時):
勉強しながら並行して行動して活動して運動して一歩踏み出す。そういう元気な個人をたくさん作る。ひいてはそれが元気な街になるんじゃないかなと言う気がします。
しかし、今回の地震では多くの職人も被災した。そこで桐本さんが取り組んだのが…「仮設工房」の建設だ。
世界的建築家が手がける「輪島塗の仮設工房」
世界的な建築家、坂茂さんが設計した「紙のログハウス」一般的な仮設住宅は完成まで2カ月ほどかかるが、紙の管「紙管」を利用したこの家はわずか2日ほどで完成する。なおかつ費用は低価格。
森本:
ちょっとびっくりですね。木ですもんね?
桐本さん:
木です。あと紙。
気になるのは耐久性だが…
桐本さん:
仮設ではなくて、恒久的な教会とか、そういう建物も建てていますので、強度は実証されています。
森本さん:
全面、木だからちょっと温かさも感じるし。
桐本さん:
ここボードで何も塗っていないんですけど、内側をわざと塗らないのは、うちの職人さんと相談して、この面にいろんな漆のサンプルを塗って、「和紙と漆」とか、「麻布と漆」とか、ショールームの機能も加えようとしています。
森本さん:
未来の輪島塗の見せ方じゃないですけど…
桐本さんが手がけるのは「暮らしに溶け込む輪島塗」
桐本さん:
従来の輪島塗と素材は一緒、技法を応用して…、これパスタ皿なんですけど、金属のフォークでぐりぐりしても大丈夫。こすれに強い。
森本さん:
傷つけちゃうイメージあるけど
桐本さん:
キズがつかない。輪島キリモトの特長のものなんです。
森本さん:
3カ月経って、今、いろんな方々にお話を聞いて回っているんですが、「変わってない」って言ってて…
桐本さん:
まぁ、、、でもね、あまり考えないようにしている。
森本さん:
それでも、こう、輪島にいる理由って言うのをお聞きしたくて…
桐本さん:
好きだからですね。この漆を使って世の中の人たちの気持ちをほっとさせたい。なんか、気持ちよくさせたい。って言うような事を目標に定めたので、輪島でしか、僕の目標は達成できないんです。だから、輪島にいますし、輪島で是非とも復興させたいと思っています。
(石川テレビ)
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