4月28日投開票の衆院東京15区補欠選挙で、他陣営の街頭演説を妨害したとして、警視庁捜査2課は13日、公職選挙法違反(自由妨害)の疑いで、政治団体「つばさの党」の東京都千代田区の事務所などを家宅捜索した。捜査関係者への取材で分かった。
他に家宅捜索したのは黒川敦彦代表(45)の埼玉県朝霞市の自宅と、同団体から立候補して落選した根本良輔氏(29)の東京都練馬区の自宅。街宣車、拡声器、プラカード、パソコンなどを押収した。
捜査関係者によると、黒川氏や根本氏らは補選の期間中、他陣営の街頭演説の会場で、演説が聞こえなくなるほどの大音量で批判や主張を繰り返したほか、別の陣営の街宣車を車で追いかけ回して交通を妨げた疑いがある。他にも複数の被害相談が警視庁に寄せられているという。
根本氏陣営は補選の期間中、「カーチェイス街宣」と称して他陣営の街宣車を追いかけるなど、妨害ととれる行為を繰り返していた。警視庁は告示の2日後の4月18日、他陣営の選挙運動を妨害したとして、黒川氏らに公選法違反の警告を出した。
黒川氏は家宅捜索後、記者団の取材に「圧力による違法な捜査。言論で対立しているだけだ。もし処罰されることがあっても続ける」と話した。
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◆自民、立民、維新は前向き 公明、共産は慎重
政治団体「つばさの党」が13日、衆院東京15区補欠選挙に関する公選法違反(自由妨害)容疑で警視庁の家宅捜索を受けたことを巡り、与野党では法改正の是非について意見が分かれた。自民や立憲民主、日本維新の会の各党は法改正に前向きな姿勢を示す一方、公明、共産両党は現行法で対応すべきだと主張した。
自民の茂木敏充幹事長は記者会見で、「罰則強化など実効性のある対応を検討したい」と述べ、法改正に含みを持たせた。維新は既に妨害行為を明記する改正案の概要をまとめており、音喜多駿政調会長はX(旧ツイッター)に「選挙期間中でも機動的に対処できるよう法改正も含む改善策を提案していく」と投稿。各党と協議すると表明した。
選挙中につばさの党に追い回されるなど、選挙妨害に遭ったという立民の泉健太代表は、国会内で記者団に、「選挙妨害の具体的な例示や、刑罰の度合いの検討といった改正の議論を党内で進めている」と説明。「維新の考えと似たような中身だ」とした。
一方、公明の山口那津男代表は官邸で記者団に「いきなり法改正というよりもまずは現行法を議論する」と語り、現行法の解釈や運用を明確化して選挙妨害に対応すべきだとの考えを示した。共産の小池晃書記局長は記者会見で「現行の公選法で厳格に対応し、言論の自由と選挙活動の自由を保障していく」と強調。維新案には「時の政権に盾突く言論の規制につながりかねない」と懸念を示した。(大野暢子)
◆若狭弁護士「政治活動の範囲を超えていた」
今回の家宅捜索について、元東京地検特捜部副部長で衆院議員も務めた若狭勝弁護士は、つばさの党が複数の候補者の演説場所でマイクで質問や主張を展開し、相手に抗議されても聞き入れなかった点がポイントだとする。「特定候補の演説場所で短時間主張する程度なら政治活動とみなす余地はあるが、複数の候補者に実施しており政治活動の範囲を超えている。警視庁は、選挙の公正を害する程度が大きいとみて捜索に踏み切ったのではないか」と推し量る。
一方、4月28日の投開票から2週間以上もたって家宅捜索した理由は「慎重に検討した結果だろう」と指摘。「候補者の行為のどこからが選挙妨害に当たるかの判断は難しく、警察が恣意(しい)的に判断すれば問題になる。例えば演説の妨害と判断する際には、音量の数値や、どこからどのくらいの時間実施したかなど、一定の基準を設けたほうがいいのではないか」と話した。(中山岳)
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