国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関のイコモスが「佐渡島(さど)の金山」(新潟県)の世界文化遺産登録に関し、「登録」に次ぐ評価の「情報照会」と勧告した。佐渡島の金山に対しては、韓国が戦時中に朝鮮半島出身者の「強制労働」があったとして反発してきた。日本政府は当時の法令に基づいた「徴用」であると反論するが、勧告には、日本に譲歩を促すかのような指摘がみられた。歴史的事実を国際社会に正しく伝える「歴史戦」にどう向き合うのか、政府の姿勢が注視される。
6日夜に内容が判明した勧告で、イコモスは次のような配慮を求めた。
《鉱業採掘が行われていたすべての時期を通じた推薦資産に関する全体の歴史を現場レベルで包括的に扱う説明・展示戦略を策定し、施設・設備などを整えること》
文化庁の担当者は、勧告後の記者会見で、求められた配慮の解釈を報道陣から問われ、勧告の文面には韓国など個別の国名の記載はないと説明。「われわれが答えるものではない」として明言を避けた。
ただ、韓国は近代も含めた「全体の歴史」について説明が必要と訴えており、勧告はそれを暗に示唆しているのではないか、と読み取れる。
政府は、ユネスコに推薦した佐渡金山の文化的価値は「江戸時代まで」に限定したもので、先の大戦に言及する韓国側の主張は「推薦の内容と直結していない」(政府関係者)と説明してきた。
強制労働についても、2021(令和3)年、戦時中の国民徴用令に基づくため「強制」には該当しないとして「徴用」を用いることが適切だとする答弁書を閣議決定。岸田文雄首相もこの答弁書の踏襲を明言している。
最終的な登録の可否は、7月21日からインドで開催されるユネスコ世界遺産委員会で話し合われる。今回の勧告は、関係者が期待した「登録」ではなく、補足説明を求める「情報照会」にとどまったものの、政府は世界遺産委で登録の決議を得る考えを表明した。
情報照会は4段階ある勧告の区分のうち、「登録」に次ぐ上から2番目の評価だが、「世界遺産登録を考慮するに値する価値がある」との指摘も得ており、本番での〝逆転〟が期待される。
文化庁によると、世界遺産委では、有効投票数の3分の2が賛成すれば登録が認められるという。
ただ、21の委員国には、日本とともに韓国も選ばれている。韓国の対応次第で議論が紛糾する可能性もある。世界遺産委の開催までの約1カ月半、勧告が求めた「全体の歴史」の説明に対し、政府がどのように対応するのかが注目される。(梶原龍、玉崎栄次)
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